15年経っても色褪せず。新版 お金持ちになれる黄金の羽の拾い方【書評】

15年経った今でも、1億円の資産は誰でも作れるのか?

新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)

1億円の資産、つまり「お金持」ちには誰でもなれる。というセンセーショナルな内容の一冊。
2002年(かれこれ15年前)に発売された本『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』のリバイバル。名著です。

私自身は20代前半、この著書を読んで、海外の株式を取引したり、ハワイやら香港やらに口座を作ったり、海外の事業にジョインしてえらい目にあったり、数年後独立してマイクロ法人をつくったりと…、実際に行動を取りました。
久しぶりに、本書を読み返してみて、いかに影響を受けていたのかを思い出しました。

『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』はどんな本?

さて、『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』ですが、いわゆる「お金持ちになる」ための著書としては、「稼ぎ方」ではなく、「お金の残し方」について主にスポットが当たっている内容になります。「稼ぎ方」の部分についてはPart3の「人生を最適設計する働き方」の中で「12 クリエイティブクラスとマックジョブ」という内容で、若干取り上げている程度です。(このクリエイティブクラスとマックジョブについては、著者の複数の著書で解説されています)
そういった意味では、そもそもとして、ある程度の収入や資産がないと実行できないようなものも少なくないのですが、書籍としては空前のベストセラーになっています。今回の新版の前にも、2014年『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ』というタイトルで再度出版されているほどです。なぜでしょうか。

その理由は、ストレートに内容が面白いことに尽きます。私たちが本書のノウハウを実行できるかどうかとは別に、とにかく面白い。著者、橘玲氏が、日本の様々な制度の中にあるバグ(本書では、それを黄金の羽と呼ぶ)を鮮やかにHackしていきます。
その、制度の矛盾点の突き方や着眼点、またそこにちらほら見え隠れする著者の思想などが、読んでいてワクワクさせるわけです。

15年前に初版が出た当時は、私は喰いつくようにこの本を読んで以来、社会の決して合理的ではない部分(構造の歪み)に関心を持つようになりました。それは場合によっては、「黄金の羽」でもありますが、時にはいいようのない「理不尽」でもあります。
おかげで、今でもその関心は失われておりません。

15年経って、この著書に書かれていた黄金の羽はどうなった?

さて、15年という時を経て、当時の『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』で分析された構造の歪みはどうなっているのでしょうか。
新版の魅力は、何と言っても2002年から2017年という歴史の転換点を含んだ期間に起きた、その変化を感じとることができる点です。

結論を言うと、2017年には、2002年当時に存在した「黄金の羽根」のいくつかは失われつつある状態です。
特に顕著なのは、法人、個人に関わる一部の税金周りの「黄金の羽」です。
税金逃れや資産逃避が容易にできないように、徐々に包囲網が敷かれてきていることが理解できます。
マイナンバーの影響や、厚生年金加入の強化など、時流もしっかり解説されています。

一方で、中小企業の創業融資のように未だに「黄金の羽」が落ち続けているものあり興味深い点です。
また、税制の中でも小規模法人の利権に関わる部分は、変わらない部分が多いと言えます。
著者の解説では、特に資産運用や法人の活用法といった部分は原理的に変わっていませんが、社会保険や海外投資を巡る税制などは状況が大きく変化しているということです。

経済や制度を分析している本の大半は、過去の提案や未来予測などについてその後検証されることなく、無責任なものが多いのですが、本書では当時の制度から現在の制度の変化について、書かれた内容についての検証やコメントが真摯に行われており、その点でも珍しいものです。

また、私は、ビジネス書は過去に書かれた内容を年数を置いてから検証することが本当の意味で著書の内容を理解するための醍醐味だと感じています。「ミネルヴァのフクロウは夕暮れに羽ばたく」ではないですが、本質を理解するためのピースは「旬」を過ぎる頃に現れてくるものです。
そのため、著者自身が解説を加えているものを再読できるのは大変うれしい機会です。

『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』の主要な論点

さて、本書の主要な部分を、ざっくりまとめると以下になります。

・ちゃんと稼いで、資産を運用していけば、ほとんどの人は億万長者になれる。
・人的資本(働いて稼ぐ)で、元手を作り働き続けて運用利回りを高めるのが大切。身もふたもないけどシンプルな方法は、働く人(共働き)や、働く年数(生涯現役)を増やすのが手っ取り早い。長く働くとなると「楽しく働ける仕事がいい」
・不動産(持ち家)を購入すると、資産運用が大きく制限される。またリスクが大きい。
・保険はリストラすべし。
・マイクロ法人を活用することで、低金利の借入れや、合法的な節税が可能になり有利になる。

これだけ見ると極めてシンプルなのですが、重要なのはその結論に至る社会構造の背景と分析のプロセスです。ぜひ、実際に著書を読んでいただければと思います。

実は、今のほうが実用的なトピックが多いかも。

著書で、多くの紙幅が割かれているマイクロ法人については、いくら合法的に節税ができるとはいえ、サラリーマンには敷居が高いものです。また、マイクロ法人を所有した状態で、稼ぐだけの事業力をもっていないと本末転倒なのではあります。しかし、少なくとも会社員と自営業者で税法上、何がどのくらい有利不利なのかの片鱗が分かるだけでも価値が高いところです。
ただ、この点だけ私の自営業経験で言うと、徹底して節税を行うと、一般論としてはキャッシュがなくなっていく方が多いですし、制度上の問題には限らない範囲で、身の回りでは過度に節税に拘らない経営者のほうが、うまくお金が回っていることが多いのでそれについては差し引いてみても良いのかなと思います。
とは言え、マイクロ法人については、法人税率が平成23年度(2011年)の改正前まで、39.54%だったものが、どんどん低下しており平成29年度(2017年)では29.97%まで下がっています。このトレンドはまだ続いていくため、マイクロ法人での節税メリットは以前よりも上がっています。
加えて、副業やフリーランスで働きやすい環境が進んでいるという意味では、2002年当時よりはマイクロ法人を作るという点は現実的にはなっていますね。(私自身も、かれこれ10年以上、マイクロ法人を利用しているフリーランスです)

一方で、バブル崩壊後の失われたウン十年と呼ばれる間には、長いデフレ期間があり、著者が衝撃を受けた1995年の阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件があり、またその後の2007年の世界経済危機、2011年の東日本大震災と、私たちの社会、経済や、働き方について価値観を一変するのに十分な事象が数多くありました。
その間、中間層の収入は大幅に落ち込み、会社員として働く多くの人にとってはそのメリットが剥がれ落ち、デメリットが顕在化しつつもあります。

この期間に、日本社会の構造の歪みはどのように変化し、どのように変わることができないのか。その一つの視点を『お金持ちになれる黄金の羽の拾い方』は与えてくれる好著と言えます。

新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ (幻冬舎文庫)

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