得意なスキルで自由をつかむ方法。『半年だけ働く。』【書評】

プロフェッショナルフリーランスの旨味が赤裸々にかかれている一冊

『半年だけ働く。』(朝日新聞出版)

フリーランス10年の私からみても、ここまで違う戦略の働き方があるのかと驚きを覚えた著書です。

まず、著者(村上アシシさん)のライフスタイルで脅威なのは、タイトルにある通り、全く働かないで旅行などをして過ごす長期休暇を取る期間と、バリバリ仕事をする期間が約半年ごとに交互に存在するという形を取っている点です。

普通に考えると、しばらく仕事をしない時間を作ったら、同じような条件での仕事復帰をするのは難しいように思えるのですが、それを実現しています。

誰にでもできる働き方ではないが、一つの完成形

本書は、フリーランスとしての完成形の一つのモデルを提示したものと感じました。

いわゆる「好きなことをして楽しく稼ごう」系の類書に比べると、本書「半年だけ働く。」の特徴は、この仕事のスタイルを決して安易に「誰でもできる」と煽っておらず、極めて地に足の着いた方法を推奨している点です。本書の読者に対する誠実な(そして、ちょっと厳しい)姿勢が一読して分かるのが以下の部分。

※P42引用

 ノマドブームが到来した時、自らがノマドであるとインターネット界隈で情報発信していた人々は、たしかに胡散臭かったように思います。あれから5年間の月日が経ち、マスコミからそっぽを向かれた人たちは、表舞台から消えた人も多いです。

 当時ノマドを目指していた人たちを見ていると、仕事内容が全く見えてこないし、何でお金を稼いでいるのか、何の分野のプロフェッショナルなのか、具体性が感じられませんでした。本質の中身(コンテンツ)よりも外面の形(スタイル)を優先すると、こうも胡散臭くなるのかという典型だったように思います。

(中略)

 しかし、単に自由なライフスタイルを語り、サラリーマンを批判するだけのプロブロガーは、信者を集めて、彼らから徴収するお布施で食っているだけです。

 そういった「虚業」ではなく、企業から評価される武器を保持し、知に足のついた「実業」で食っていく方が確実に長続きします。かっこつけてスタイルから入ろうとせずに、まずはしっかりと中身の伴ったスキルを身につけることが、独立の絶対条件です。

本書は、自分も同じようなライフスタイルを実現したい!として読むのであれば、ちょっと読み手を選んでしまうかもしれません。

というのも、著者は「半年だけ働く」スタイルを確立するためには、まず「サラリーマン」として上司から「辞めないで欲しい!」と慰留される水準のプロフェッショナルになる(しかもできれば大企業)のが前提となっているからです。

基本戦略は、企業で高スキルを身に着けてから独立、エージェントの活用

すでに、一定水準の企業に努めている方や、これから就職を考える学生でないと、そもそも実現可能性の高いレールからはずれていてショックを受けるかもしれません。(私も会社員時代は、2次3次下請けの小さい会社で働いていたので、そのタイミングで読んでいたら地に伏して涙していたでしょう・・・)

実際に、著者もアクセンチュアという大手コンサルティング会社で上司から辞めないで欲しいと請われるレベルのプロフェッショナルな技術を身に着けてから独立…という、凡人から見ると雲の上な経歴です。

その上で、エージェントを上手く活用して、大きな会社から仕事を貰うというのが、本書の働き方パートでの基本的な戦略です。

実際のところ、フリーランスで食べていくには、プロフェッショナルな技術の有無は極めて重要なので、プロフェッショナルな技術を習得した上で独立を目指すというのは、説得力があります。

フリーランスになると収入が上がる理由は、企業の「中抜き金額」

さて、稼ぎ方パートに関して、私がこれだと思う本書の価値はここからです。

本書「半年だけ働く。」には、フリーランスという仕事をしながら、半年ガッツリ休んだり、仕事がない期間があっても、収入面でなぜ問題がないかの「カラクリ」が解説されています。一部の「ブロガー」や「アフィリエイター」など、特殊な働き方をしているフリーランスを除き、多くの受託仕事で働いているフリーランスは、この仕組が当てはまるでしょう。

それは、独立の旨味は「中抜き金額の差」として説明されています。

少し長いですが引用させていただきます。

※P45 引用

コンサルティング業界に限ると、独立すれば会社員時代と比べて手取りの報酬が約2倍になります。具体的な事例を説明しましょう。

 コンサルティング業界の一般的な単価構造を表にすると次のようになります。客単価(クライアントに対するコンサルタント一人あたりの1ヶ月の請求額)の内訳は、コンサルタント本人の給料以外に、人材育成費や総務・経理など管理部門の人件費、プロジェクトの営業費用など、様々なコストが含まれます。

 それに対してフリーランスの場合は中抜きされる金額がプロジェクトを紹介してくれるエージェントへの手数料のみとなり、コンサルタント本人がもらえる報酬は会社員時代よりも確実に増えます。人によっては3倍になったというコンサルタントもいます。

 加えて、クライアントに請求する「客単価」においても、大手コンサルティング企業に所属するコンサルタントより、独立した個人コンサルタントのレートの方が相場的に低くなります。

 つまり、クライアントにとってもコンサルティングフィーが下がり、雇われるコンサルタントにとっても報酬が上がり、お互いがWin・Winの関係になれるのです。

フリーランスとして稼ぎやすい職種、稼ぎにくい職種についても整理されている

多くの「稼いでいるフリーランス」というのが、どういった構造で稼ぎを得ているのかが極めて明快にわかります。

また、サラリーマンの延長線上でフリーランスとして独立する場合、どのような職種がフリーランスとして稼ぎやすいか、独立しやすいかについても丁寧に整理されています。

※P63引用

 最も適しているのは、個人が所有する技術や知識そのものに高い付加価値がある職種です。いわゆる「知的産業」と呼ばれる領域です。

(中略)

 これらの職種に共通するのは、「問題解決のプロフェッショナル」として対価が支払われる点です。

(中略)

 ざっくりとした目安で、サラリーマン時代の手取り給料より月の報酬は約2倍に跳ね上がります(この数値はあくまで目安であって、本人のスペシャリティ次第で前後します)。

(中略)

 いわゆる「業務代行」としての参画だと、月単価は抑えられる傾向にあり、業界の傾向を見ると、サラリーマン時代の手取りと比べて1.5倍くらいの報酬になるのが目安と言えます。

逆に、スペシャリストであっても企業に特化した技術職(自社製品の開発を担当する技術者や研究者)などはフリーランスに向かないなど、一覧表も含めて向き不向きや報酬の傾向などが著者によって整理されています。

フリーランスとして独立した場合、どのような職種だとどのくらいの稼ぎが増えるのか、ざっくりとはいえ具体的な職種や数値で示してあるものを私は見たことがなく、その意味でも貴重な情報です。詳細は、著書で確認していただければと思います。

これからのキャリアパスを考えている人、就職活動を行っている学生の方などは、参考になるのではなないでしょうか。

逆に、著者のようなスペシャリティを身に着けていない、もしくは今のまま働いては身に着かない人(私もそうでしたが涙)は、同じ戦略を取ってはいけないということでもあります。実際、私は10年前、大したスキルもないのに独立して破産しかけました。ハイ…。

フリーランスのメリットだけでなく、デメリットも

また、フリーランスとしてのうまみだけでなく、

※P94引用

・収入が不安定になる。

・会社が担保してくれていた保障がなくなる。

・社会的信用を失う。

・最先端な技術、コアな技術に触れられなくなる。

といった、リスクについても触れています。

本書の価値は、リアルな体験談や、著者の徹底した思考とライフスタイルが見えること

もう一つ、本書の高い価値は、著者の生々しいリアル情報です。

著者の10年間の、貯金額推移がグラフになっていたり、「ちょっと、ここまで暴露していいのかな…」と思うような情報がちらほら。

また、「半年だけ働く」ために、どのようにミニマルな生活をしているのかというライフスタイルについての考え方や実行動が紹介されています。実現するには、明確な思想と、徹底した行動が必要なのだなと分かりますね…。

これが中々にすごい。

  • ここ10年同じ拠点に半年間以上住んだことがない。
  • スーツケースに入らないものは買わない。
  • 経験になるものにはお金を使うが、所有欲、物欲を満たすものにはお金を使わない。
  • 名誉欲を捨てる。
  • 紙の本は一切買わない(紙の本の中でこれを書くのはある意味すごい)
  • 年賀状は出さない。
  • 手帳は持たない。
  • 現金を持たない。

などなど、徹底していてすごいです。

本書からの学びは、飛び抜けてユニークなライフスタイルを実現するためには、「半年だけ働く」という目的達成のために、仕事から、ライフスタイルまで徹底的に最適化の工夫を行っているということ。

いろんな覚悟をしているし、そのために考え抜いた戦略も取っている、捨てているものも多い。それだけ、自分が望むライフスタイルのために考え抜いて行動することが大切だということが分かります。

「得意なこと」だけでなく「好きなこと」で稼ぐパートも

さて、「好きなこと」でなく「得意なこと」で稼げと主張している著者ですが、最終章「ハイブリッドに生きる」では、好きなこと(著者の場合は旅とサッカー)をマネタイズすることについても触れています。

「意識高く溺れ」「意識高くアウトプット」することの大切さが主張されています。

趣味を洗練させる上でも、マネタイズに繋げる上でも、重要なのはアウトプットすること。これについては、よっぴー氏の著書『明日クビになっても大丈夫』にも、極めて近いことが書かれていて、好きなことを極めて仕事にしてくのに共通のあり方のようです。

同じフリーランスでも、ここまで違うのかという驚き

本書を読んで感じたのは、著者の働き方が、あるスキルを徹底的に高めて仕事を取り続ける、職人型のフリーランスとしての一つの完成形であることです。特に、そのモデルでの業界の給与(売上)の構造は私にとって大変参考になりました。

同様に興味深かったのが、私自身10年フリーランスをやっているのですが、驚くほどタイプが異なるということでした。私の場合…。

  • 仕事はエージェントを使わない
  • 半年休むどころか、平日も休日も何かしら仕事している(仕事が趣味なのでしょうがない・・・)
  • その代わり、仕事している日も育児参加してたり、昼寝したり、日中ぶらぶら散歩してたり結構自由
  • 動き回るのがしんどいので、都心から動かない
  • 売上は、特定のスキル1本ではなく数種類の収入源をいつも持つようにしている

ベクトルが全然違う方向を向いているようで、フリーランスの仕事のスタイルや可能性、懐の深さを知ることができて、大変面白かったです。

 プロフェッショナルの技術を持って、自由になるというのはどんなものなのか、そもそも、自分にとっての自由とは何なのか、を著者の一つのケーススタディーから考えてみるのに役に立つ一冊です。

『半年だけ働く。』(朝日新聞出版)

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ABOUTこの記事をかいた人

Webマーケティング分野中心に暴れているフリーランスです。社会学、哲学、経済学など大好き。コンサルティング、広告運用、Web管理の他、自分の所有するメディアからの広告収入、セミナー講師、著書印税、イベント売上など10種類くらい収入源を作っていろいろ実験中です。bizimaという読書会やってます。ペンネームで本もいろいろ書いてます。