人脈の時代は終わった。『ゆるいつながり 協調性ではなく、共感性でつながる時代』【書評】

「人脈」という言葉が一切使われない「人脈術本」

『ゆるいつながり 協調性ではなく、共感性でつながる時代』(本田直之著 朝日新書)

本書、『ゆるいつながり 協調性ではなく、共感性でつながる時代』は、ベストセラー作家「本田直之」氏によって書かれた、いわゆる人脈術ジャンルの著書になります。一方で、著者は人脈という言葉を使ったとたんに、著者が伝えたい本質からズレてしまうとし「はじめに」でこのように書いています。

※P4引用(強調は管理人によるもの)

「人脈」という言葉を使ったとたん、わたしが伝えたい人とのつながり方、つまり「仲間に貢献することを大前提にしたコミュニティやネットワークのあり方」、本書のテーマである「ゆるいつながり=ゆるい、けれども深いつながり」というイメージがストレートに伝わらなくなってしまうのです。

典型的なのは、世間に流布している「人脈は金脈」という発想でしょう。わたしも「人脈は資産」とはいいますが、金脈と資産は似ているようでいて、まったく異質なものです。

金脈という言葉が示す人間関係は、相手から自分が一方的に利益を得ようとする関係性であって、いわば「金ヅル」ですが、資産という言葉が示す人間関係はむしろその逆で、自分のストックを使って相手に利益を与えようとする人間関係なのです。

人間関係を作る上で大切なのは、自分が利益を得られるかどうかではなく、そもそも「自分が役に立つことができるか」「自分が蓄えてきた資産を相手にあたえることができるか」というところにフォーカスされています。

「ゆるいつながり」と「昭和的強制のつながり」の違い

「自分が相手に与えること」を前提とした上で、SNSに象徴される「ゆるいつながり」は、従来の「昭和的なつながり」と下記のような違いが出てきているようです。

「昭和的強制のつながり」

  1. 人間関係が濃密なようで、希薄。
  2. 人と知り合うためのハードルが高い。
  3. 知り合える人の幅が狭く、画一。
  4. 出る杭は打たれる。

 

「ゆるいつながり」

  1. 人間関係が希薄なようで、濃密。
  2. 人と知り合うためのハードルが低い。
  3. 知り合える人の幅が広く、多様。
  4. 出る杭は伸ばされる。

 

現実的には、この二つの価値観が融合しているのが現代の一般的な人間関係ですが、昭和的な強制のつながりに没頭しすぎると、ゆるいつながり方をしている、新しい世代のことが分からなくなり、コミュニケーションが取れなくなってしまいます。

P52以降では、ネットが生んだ下記のような「ゆるいつながり」の歴史をたどり、これらの流れから、SNSがヨコ社会を作るとしている仕組みを紐解きます。

第1期「ゆるいつながり」〜パソコン通信からメーリングリストまで〜

第2期「ゆるいつながり」〜ミクシィからフェイスブック〜

第3期「ゆるいつながり」〜インスタグラム、クラウドファンディング〜

その上で著者は…

P68

少し厳しい言い方になりますが、ヨコの人間関係が苦手な人はこれからの時代、ビジネスで成功を収めるのも難しくなってくるでしょう。

ヨコのつながりが浸透してきた社会では、今まで以上に本質的な実力主義になり、そのための作法としてのヨコのつながりで必要な作法を身につける必要があるようです。

ヨコのつながりになると、どのように変わっていくのか具体的な事例が、展開されていますので、そちらはぜひ本書をお読み下さい。

まさにその通りなのだが、中々に高すぎるハードル

「ゆるいつながり」=「ヨコのつながり」のための必須ツールとして本書ではSNSの仕組みや、使い方、考え方、事例がかなりの紙幅を割いて解説されています。

…が、どちらかというと、SNSで実践すべきネットワークの作り方よりも、SNSでのネットワークのNG行為がひたすら書かれています。きっと、著者は迷惑なアプローチでいろいろ苦労しているんだろうなぁというのが分かります…。(しみじみ)

その中で唯一といっていいほど、明確に書かれている「ゆるいつながり」で豊かな人間関係を築くためのポイントはこれ。

「自分自身の価値を高めて、他の人が持っていない価値で人に貢献すること」

分かっちゃいるけどハードですね。

また、FacebookやInstagram、クラウドファンディングなどで必要になるのが、上記とも関係しますが、

「共感を呼ぶような発信を行うためのセンス」

としています。これについては、実際に自分がinstagramやクラウドファンディング、Facebookなりをやってみて、センスの良いアカウントを見ながら学びましょうとのこと。自分のセンスでどれだけ共感が得られるか、フォロワー数などで一発で分かるということです。これもハード。でも、もっともですね。

つながりの5つの型と共感の関係

さて、「自分自身の価値を高めて、他の人が持っていない価値で人に貢献すること」

について、著者の、「ゆるいつながり」を5つの型という分類を見ると、その高いハードルを突破する糸口が見えてきます。※P102

1.ハブ型
ネットワークの中心として、人と人をつなぐ(著者)

2.能力提供参加型
自分の(専門的・強みになる)能力をコミュニティに提供する

3,フェイスブック型
異業種交流会での名刺交換

4.共感型
単なる応援にとどまらず、行動的なサポートをともなう

5.プロジェクトチーム型
新しいイベントをやろうというときなどに特別に集まって、仲間として一緒に活動する

例えば、「能力提供参加型」や「プロジェクトチーム型」は、人より卓越したスキルを身に付けていないと難しいでしょう。(特にプロジェクトチーム型として有用になるのは高い技術を持ったプロフェッショナルになることが必要だと思います)

そのため、「ハブ型」のように人をちなぐ方法、また、自分自身は特別な能力、技術を提供できなくても、「共感型」として応援することでコミュニティに貢献するような形を取ることで、私達のような「ふつうの人」たちも、「ゆるいつながり」を増やしていく可能性が見えてきます。

もちろん、長期に渡って「食べていきたい」のであれば、「能力提供参加型」や「プロジェクトチーム型」は問答無用で仕事になるし、強みになるので「ゆるいつながり」を作りつつ、自分のスキルを磨いていくのは必須でしょう。

新しいコミュニティではFacebookの活用がキモ

本書の中では、「ゆるいつながり」を作っていくためのSNSとして、Facebookを重要なものとして紹介しています。若年層や、一部の間ではすでにオワコンになっている感のあるFacebookがこれからも重要とは「これいかに?」と思う人もいそうですね。ただ、私も強く実感しているのですが、現実ではFacebook上では、長くゆるくビジネスやプロジェクトのつながりなどが生まれるような人間関係が活発に作られています。

海外の文脈では分からないところがありますが(Linkedinなどが活用されていますね)、少なくとも日本においては、ビジネスSNSとして一番有効なのはFacebookと断言できるでしょう。

Facebookについて著者は、

  • あくまでも実名の人間関係をベースにして、人と人とのつながりを「一対一」という形で作ることができるツールだと思います。※p120

とし、Facebookの特徴と活用方法を以下のようにまとめます

  • Facebookは高機能な名刺として利用する。
  • グループ機能で「センス」で集まるコミュニティに参加、運営する。

これらを活用することで「ゆるいつながり」を維持できるし、「人間関係が希薄なようで、濃密」になりやすいのでしょう。

ちなみに、FacebookのようなSNSは似たような価値観の人ばかりでかたまってしまう、自分の価値を強化するようなニュースや投稿を閲覧してしまっててよろしくないという話は、『誰もが嘘をついている ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性』という著書の中で研究成果として否定されている記述がありますので興味のある方はご参照ください。研究結果によると、基本的にはFacebookのつながりを持つことで、そうでなかったときよりも思想信条において多様な価値観に触れる可能性が高いとのことです。その意味でも、本書のSNSと「ゆるいつながり」の関係性は理解しやすいものになるでしょう。

Instagramは世界観を発信するツール

さらに、Instagramの活用についてもおすすめのユーザや実例などを交えながら触れています。Instagramは、Facebookのように一対一の人間関係でもないし、コミュニケーションツールとも少し違うと筆者は述べています。

インスタはコミュニケーションツールというよりも、自分の投稿の断片から世界観をつくっていくツールなのです。そして投稿者は、他のアカウントの投稿を目にすることで多様なセンスやライフスタイルに触れて、ますますセンスを高めていくことができるのです。

本書を読んで、私も少しInstagramをきちっとやろうかなという気持ちになりました…。ひたすら投稿して終わりだったのですが、こちらの記述を見てどちらかというと、投稿するだけより、センスの良い投稿を閲覧する側でも活用してみたいなぁと。

また、本書ではTwitterについてあまり触れられていないのが引っかかりました。炎上やネガが多いからですかね…。Instagramが映像的なセンスで世界観を作るツールであるとすると、tiwtterは言語的(ポエム?リリック?)なセンスで世界観を作るツールな気もしますが、ちょっとここは気になるところです。

共感をベースに、信用関係を構築し、維持する

さて、実際に「仕事につなげる」「食べていく」というところに引き寄せて本書を考えると、協調性(強制)をベースに、信用を構築して、給料を貰うのがいままでのパターン。好き(共感性)をベースに、「この人は能力がある、一緒に仕事をしてみたい、じゃあプロジェクトをやろうか。」これが、新しいやり方なのかなと思いました。

人間関係というのは、本来、強制的に同じ地域や職場で顔を合わせたり、血のつながりなど強制力がないと難しいところがあります。「好き(共感性)」は、そういった強制的なものとは無関係で、人との長く緩いつながりを継続するための最高の潤滑剤ということなのでしょう。私自身が、フリーランスという立場で10年以上仕事をし続けている中で、これらの考え方はすごく納得がいくものでした。

また、本書では触れられていませんが、私はおそらくインターネットの発達で、今までの「昭和的な協調性ベースの付き合い」、「ゆるいつながり」以外に、極めてスマートで利害関係に特化したつながりのようなものも一部で生まれてくる可能性があると考えています。

具体的には、Web上のマッチング的なサイトを使って、必要なところに必要な人材の必要な能力をサクッと利用する。仕事をする側も、期間限定で能力を提供してさようなら。面倒な関係はなし。という徹底した個としての関わりです。「機能的なつながり」と呼んでみます。

今のところ、クラウドソーシングのような仕組みが出てきていますが、現実的には単価が低すぎてなかなかワークしておらず、もっとも機能しているのは、短期的なフリーランスの紹介エージェントが近いのかなと思います。この流れについては本論から外れるので深くは論じませんが、面倒なことも少ない分、シビアな世界でもあるといえるでしょう。

さて、このような「ゆるいつながり」で活躍する人たちが増えていく社会はどうなっていくのでしょうか。「ゆるいつながり」は、原則として共感や好きなことを軸にして、人間関係が形成されプロジェクトが運用されるので、ポジティブでストレスも少ないことが多いでしょう。しかも、携わるプロジェクトはクリエイティブで高単価、やりがいのあるものが多い。一方で、「協調的なつながり」での仕事は我慢がベースで、徐々にクリエイティブな仕事が、「ゆるいつながり」に侵食されていく。

これについては、著者が第6章で以下のように語っています。少し長いですが引用させて頂きます。

※P178

「人生100年時代」、みんなが長生きになるということは確かによいことですが、80歳くらいまで働かなければ生活できない時代になるということではないでしょうか。

(中略)

その時、会社勤めだけをしていた人は、どうやってお金を稼ぐのか。再雇用の制度はあるかもしれませんが、会社がつぶれてしまったらどうするのか。大半の人が途方に暮れるのではないでしょうか。

たとえば、大企業の部長をやっていても、個人になんのスキルもなければ会社の外でできる仕事といったら単純作業しかないでしょう。そうなると給料も5分の1、10分の1に減るでしょう。そうしたギャップに経済的にはともかく、心理的に耐えられるのかどうか。わたしは相当難しいと思います。つまり、生きていても楽しくないという人生が、定年になった70歳から100歳まで30年も続くわけです。

その点、単純作業ではなく、なにか個人で稼ぐスキル、「オリジナリティ」を持っている人たちは、いくつになっても形をかえ、進化し続けながら仕事ができるわけです。単純作業と同じ金額しか稼げないとしても、人生の充実度、楽しさは格段に違うのではないでしょうか。

本当に、「協調的つながり」だけでは厳しい世の中になっていくのか。「ゆるいつながり」はもしかしたら一時的なトレンドの可能性はないのか。そんな未来を考えながら読んでも楽しい著書ですし、本書には単純な人脈術であったり、SNSの活用法ではなく、今起きつつある社会の流れを、「つながり」という視点で学ぶこともできるおすすめの一冊です。

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Webマーケティング分野中心に暴れているフリーランスです。社会学、哲学、経済学など大好き。コンサルティング、広告運用、Web管理の他、自分の所有するメディアからの広告収入、セミナー講師、著書印税、イベント売上など10種類くらい収入源を作っていろいろ実験中です。bizimaという読書会やってます。ペンネームで本もいろいろ書いてます。